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2019年、京大 文系 第3問

 a,b,cを実数とする。次の命題が成立するための、 a,cが満たすべき必要十分条件を求めよ。
さらにこの (a,c)の範囲を図示せよ。
命題
すべての実数 bに対し、ある実数 xが不等式 ax^2+bx+c<0を満たす。


この問題もシンプルに書かれています。
「すべての実数 b」とあり、 a cに関する条件を、 bを使わずに表すのでしょう。
「2次式<0」の形になっているので、2次方程式の解の判別式*1を使っていくのでしょう。
この筋で考えていきます。

以下、
\begin{equation}
f(x)=ax^2+bx+c
\end{equation}とします。

補題1

実数 a,b,cを係数に持つ2次方程式
\begin{equation}
f(x)=ax^2+bx+c=0
\end{equation}の判別式
\begin{equation}
D=b^2-4ac
\end{equation}が、

  1. 異なる2実数解を持つ必要十分条件 D>0
  2. 1つの実数解を持つ必要十分条件 D=0
  3. 実数解を持たない必要十分条件 D<0

です。*2

補題2

補題1より、以下のことを導くことができます。

  •  a<0の場合
    •  D>0の場合、 f(x)>0を満たす実数 xが存在します。
    •  D=0の場合、 f(x)=0を満たす実数 xがただ1つ存在します。
    •  D<0の場合、実数 xに対し、常に f(x)<0です。
  •  a>0の場合
    •  D>0の場合、 f(x)<0を満たす実数 xが存在します。
    •  D=0の場合、 f(x)=0を満たす実数 xがただ1つ存在します。
    •  D<0の場合、実数 xに対し、常に f(x)>0です。

グラフを描いてみれば明らかです。
補題2を基に、条件を整理していきます。

 a<0の場合

この場合、 f(x)<0を満たす実数 xは必ず存在します。
念のため、場合を分けて見ていきます。

  •  D<0の場合、常に f(x)<0です。
  •  D=0の場合、 f(x)=0となる1点を除き f(x)<0です。
  •  D>0の場合、 f(x)=0となる xは2つあり、この区間では f(x)<0です。

 a=0の場合

この場合、 b \neq 0であれば
\begin{equation}
f(x)=bx+c<0
\end{equation}を満たす xは、 b,cに依らず存在します。
\begin{equation}
\left \{
\begin{array}{ll}
x<- \displaystyle \frac{c}{b} & (b>0)\\
x>- \displaystyle \frac{c}{b} & (b<0)
\end{array}
\right.
\end{equation}です。
なお、 b=0の場合は c<0でないと命題は満たされません。

 a>0の場合

\begin{equation}
D=b^2-4ac>0
\end{equation}であれば、 f(x)<0を満たす実数 xが存在します。
ここで a>0なので、
\begin{equation}
c<\frac{b^2}{4a}
\end{equation}となります。
ところで、すべての実数 bに対し
\begin{equation}
b^2 \ge 0
\end{equation}なので、
\begin{equation}
c>0
\end{equation}とすれば、 bに依らず
\begin{equation}
D=b^2-4ac>0
\end{equation}となり、 f(x)<0をみたす実数 xが存在することが言えます。
なお、このとき
\begin{equation}
f(0)=c<0
\end{equation}であるので、命題をみたすことは明らかです。

まとめ

以上より、
すべての実数 bに対し、ある実数 xが不等式
\begin{equation}
ax^2+bx+c<0
\end{equation}を満たすための a,cが満たすべき必要十分条件は、
\begin{equation}
a<0またはc<0
\end{equation}となります。
図示は省略します。

おまけ

そもそも
\begin{equation}
f(0)=c<0
\end{equation}が命題を満たしているのは明らかです。
また、
\begin{equation}
a<0
\end{equation}であれば、
\begin{equation}
f(x)=ax^2+bx+c<0
\end{equation}となる xは必ずあります。

*1:2次方程式の解と判別式については、別の記事で見ていくことにします。

*2:これも別の記事で述べることにします。