を実数とする。次の命題が成立するための、が満たすべき必要十分条件を求めよ。
さらにこのの範囲を図示せよ。
命題
すべての実数に対し、ある実数が不等式を満たす。
この問題もシンプルに書かれています。
「すべての実数」とあり、とに関する条件を、を使わずに表すのでしょう。
「2次式<0」の形になっているので、2次方程式の解の判別式*1を使っていくのでしょう。
この筋で考えていきます。
以下、
\begin{equation}
f(x)=ax^2+bx+c
\end{equation}とします。
補題1
実数を係数に持つ2次方程式
\begin{equation}
f(x)=ax^2+bx+c=0
\end{equation}の判別式
\begin{equation}
D=b^2-4ac
\end{equation}が、
です。*2
補題2
補題1より、以下のことを導くことができます。
- の場合
- の場合、を満たす実数が存在します。
- の場合、を満たす実数がただ1つ存在します。
- の場合、実数に対し、常にです。
- の場合
- の場合、を満たす実数が存在します。
- の場合、を満たす実数がただ1つ存在します。
- の場合、実数に対し、常にです。
グラフを描いてみれば明らかです。
補題2を基に、条件を整理していきます。
の場合
この場合、であれば
\begin{equation}
f(x)=bx+c<0
\end{equation}を満たすは、に依らず存在します。
\begin{equation}
\left \{
\begin{array}{ll}
x<- \displaystyle \frac{c}{b} & (b>0)\\
x>- \displaystyle \frac{c}{b} & (b<0)
\end{array}
\right.
\end{equation}です。
なお、の場合はでないと命題は満たされません。
の場合
\begin{equation}
D=b^2-4ac>0
\end{equation}であれば、を満たす実数が存在します。
ここでなので、
\begin{equation}
c<\frac{b^2}{4a}
\end{equation}となります。
ところで、すべての実数に対し
\begin{equation}
b^2 \ge 0
\end{equation}なので、
\begin{equation}
c>0
\end{equation}とすれば、に依らず
\begin{equation}
D=b^2-4ac>0
\end{equation}となり、をみたす実数が存在することが言えます。
なお、このとき
\begin{equation}
f(0)=c<0
\end{equation}であるので、命題をみたすことは明らかです。
まとめ
以上より、
すべての実数に対し、ある実数が不等式
\begin{equation}
ax^2+bx+c<0
\end{equation}を満たすためのが満たすべき必要十分条件は、
\begin{equation}
a<0またはc<0
\end{equation}となります。
図示は省略します。
おまけ
そもそも
\begin{equation}
f(0)=c<0
\end{equation}が命題を満たしているのは明らかです。
また、
\begin{equation}
a<0
\end{equation}であれば、
\begin{equation}
f(x)=ax^2+bx+c<0
\end{equation}となるは必ずあります。