を自然数とする。整式を整式で割った余りをとする。このときとは整数であり、さらにそれらをともに割り切る素数は存在しないことを示せ。
整式を、整式を用いて
\begin{equation}
x^n = (x^2 -2x -1)Q_n(x) + a_n x + b_n \tag{1}
\end{equation}と表すこととします。
の場合、式(1)より
\begin{equation}
x = a_1 x + b_1
\end{equation}なので、係数を比較して
\begin{eqnarray}
a_1 &=& 1 \\
b_1 &=& 0
\end{eqnarray}を得ます。
は整数であり、共に割り切る素数は存在しません。(A)
一方、式(1)より、
\begin{eqnarray}
x^{n+1} &=& (x^2 -2x -1)Q_{n+1}(x) + a_{n+1}x + b_{n+1} \tag{2} \\
x^{n+1} &=& x(x^2 -2x -1)Q_n (x) + a_n x^2 + b_n x \\
&=& (x^2 -2x -1)(x + a_n)Q_n (x) + (2a_n + b_n)x + a_n \tag{3}
\end{eqnarray}が得られます。*1
式(2), (3)の係数を比較して、
\begin{eqnarray}
a_{n+1} &=& 2a_n + b_n \tag{4} \\
b_{n+1} &=& a_n \tag{5}
\end{eqnarray}を得ます。
これより、
が整数であれば、も整数となります。(B1)
また、を共に割り切る素数が存在すると仮定し、
\begin{eqnarray}
a_{n+1} &=& \alpha p \\
b_{n+1} &=& \beta p
\end{eqnarray}とします。
式(4), (5)により、
\begin{eqnarray}
a_n &=& \beta p \\
b_n &=& a_{n+1} - 2a_n = (\alpha -2\beta)p
\end{eqnarray}を得ます。
つまり、は共にで割り切れることになります。
繰り返していくと、もで割り切れることになります。
ところが、これはに矛盾します。
よってを割り切る素数は存在しない(B2)
ことが分かります。
以上、(A), (B1), (B2)より、
は共に整数であり、共に割り切る素数は存在しない
ことが示されました。
解説
本問は、を式(1)の形に書くことが鍵になります。
これができると式(2), (3)は容易に導くことができ、を式(4), (5)の形に書くことができます。
あとは、数学的帰納法と背理法(悖理法、帰謬法)で攻略することになります。
背理法 - 数式で独楽する
数学的帰納法 - 数式で独楽する
ちなみに、の最大公約数をと書くことにすると*2、式(4), (5)と互除法により、
\begin{eqnarray}
\mathrm{gcm}(a_{n+1}, \ a_n) &=& \mathrm{gcm}(a_n, \ b_n) \\
\mathrm{gcm}(a_{n+1}, \ b_{n+1}) &=& \mathrm{gcm}(a_{n+1}, \ a_n)
\end{eqnarray}となり、
\begin{eqnarray}
\mathrm{gcm}(a_{n+1}, \ b_{n+1}) &=& \mathrm{gcm}(a_n, \ b_n) \\
& \vdots & \\
&=& \mathrm{gcm}(a_1, \ b_1) = \mathrm{gcm}(1,0) = 1
\end{eqnarray}となります。