「数学的帰納法」とは、
全ての自然数に対し命題が成り立つ
ことを証明する、有力な方法です。
以下のステップで、全ての自然数に対して命題が
- の場合、が成り立つことを示す。
- の場合にが成り立つと仮定し、の場合もが成り立つことを示す。
派生型はいろいろあるでしょうが、基本型は上の通りです。
この2つのステップで、
\begin{equation}
P(1) \to P(2) \to P(3) \to \cdots \to P(n) \to \cdots
\end{equation}と芋づる式に全ての自然数に対して命題が成り立つことを示すことができるのです。
本稿では、数学的帰納法の誤用例を紹介します。
全ての人はハゲである
有名なジョークです。「証明」は次の通りです。
- 髪の毛が1本もない人はハゲである。
- ハゲの人に髪の毛を1本足しても、やはりハゲである。
- よって数学的帰納法により、全ての人はハゲである。
1項については、異論を挟む余地はないでしょう。
2項も同意する人は多いはずです。
しかし3項は明らかに誤っています。
この「証明」の問題点は、「ハゲ」を髪の毛の本数で定量的に定義できないところにあります。