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京大2021年 理系 第6問の問2

$a$を1より大きい定数とする。微分可能な関数 f(x) f(a)=a f(1)を満たすとき、曲線 y=f(x)の接線が原点(0, 0)を通るものが存在することを示せ。

解答例

曲線 y=f(x)上の点 (t, f(t))における接線の式は、
\begin{equation}
y = f'(t) (x -t) +f(t)
\end{equation}です。整理して
\begin{equation}
y = f'(t) \, x -t f'(t) +f(t)
\end{equation}を得ます。
接線の$y$切片は
\begin{equation}
g(t) = -t f'(t) +f(t)
\end{equation}となります。

(i)  f'(1)=f(1)の場合
\begin{equation}
g(1) = -f'(1) +f(1) =0
\end{equation} です。

(ii)  f'(a)=f(1)の場合
\begin{equation}
g(a) = -a f'(a) +f(a) = a \left( -f'(a) +f(1) \right) =0
\end{equation} です。

f:id:toy1972:20210228230140p:plain:w300
(iii)  f'(1) < f(1)かつ f'(a) > f(1)の場合
\begin{eqnarray}
g(1) &=& -f'(1) +f(1) > 0 \\
g(a) &=& -a f'(a) +f(a) = a \left( -f'(a) +f(1) \right) < 0
\end{eqnarray}となります。

f:id:toy1972:20210301060859p:plain:w300
(iv)  f'(1) > f(1)かつ f'(a) < f(1)の場合
\begin{eqnarray}
g(1) &=& -f'(1) +f(1) < 0 \\
g(a) &=& a \left( -f'(a) +f(1) \right) > 0
\end{eqnarray}です。

(v)  f'(1) > f(1)かつ f'(a) > f(1)の場合
 f(b) = b f(1)なる b \in (1, a)が存在し、 f(b) \leqq 0です。
区間 1 \leqq t \leqq a ] を  1 \leqq t \leqq b, \, b \leqq t \leqq aに分割すれば、上記(i)~(iv)に帰着できます。

(vi)  f'(1) < f(1)かつ f'(a) < f(1)の場合
 f(b) = b f(1)なる 1< b < aが存在し、 f(b) \geqq 0です。
上記(v)と符号のみ逆で、あとは同様です。

以上(i)~(vi)より、

 g(t)=0となる 1 \leqq t \leqq aが存在する

ことが示されます。
接線の$y$切片が g(t)=0ということは、接線が原点(0, 0)を通ることを意味します。
したがって、
曲線 y=f(x)の接線が原点(0, 0)を通るものが存在する

ことが示されます。(証明終わり)

解説

絵を描いてみれば一目瞭然ですが、「接線が原点を通る」をどのように表現するかが悩ましいです。
絵を見た感じから、ロルの定理平均値の定理の亜種かと思いましたが、その筋で行くと上手くいきませんでした。
結局、接線の$y$切片を考えるに至り、 x=1,aにおける接線の$y$切片の符号が異なることを示すことになりました。
ひとつの方法に拘り過ぎないように気を付けたいですね。