平面上の点で座標、座標がともに整数である点を格子点という。は整数でとし、直線を考える。
(1) 直線上の格子点を1つ求めよ。
(2) のとき、の領域に直線上の格子点は存在しないことを示せ。
(3) ならば、の領域に直線上の格子点が存在することを示せ。
小問(1)の解答例
直線
\begin{equation}
ax +(a^2 +1)y = k \tag{1}
\end{equation}が通過する点について、次のように考えていきます。
恒等式
\begin{equation}
a(-a) +(a^2 +1) \cdot 1 = 1
\end{equation}の両辺を倍すると、
\begin{equation}
a(-ka) +(a^2 +1)k = k \tag{2}
\end{equation}を得ます。
式(2)は、整数の組
\begin{equation}
(x,y) = (-ka, k)
\end{equation}が式(1)を満たすことを示しています。
よって、直線の格子点の1つは、
\begin{equation}
(x_0, y_0) = (-ka, k)
\end{equation}です。
小問(2)の解答例
恒等式
\begin{equation}
a(a^2 +1) -a(a^2 +1) = 0
\end{equation}の両辺に整数を掛けます。
\begin{equation}
na(a^2 +1) -na(a^2 +1) = 0 \tag{3}
\end{equation}となります。
式(2), (3)を辺々相加えると
\begin{equation}
a \left \{ -k +n(a^2 +1) \right \} +(a^2 +1)(k -na) = k \tag{4}
\end{equation}を得ます。
式(4)は、整数の組
\begin{equation}
(x,y) = \left( -ka +n(a^2 +1), \ k -na \right)
\end{equation}が式(1)を満たすことを示しています。
よって、
\begin{equation}
(x_n, y_n) = \left( -ka +n(a^2 +1), \ k -na \right)
\end{equation}も格子点です。
は互いに素なので、ある格子点の隣の格子点は
\begin{equation}
(x_{n \pm 1}, y_{n \pm 1}) = \left( x_n \pm (a^2 +1), \ y_n \mp a \right)
\end{equation}です。複号は同順です。
さて、
\begin{equation}
k = a(a^2 +1)
\end{equation}のとき、格子点の座標は
\begin{eqnarray}
x_n &=& -a^2(a^2 +1) +n(a^2 +1) \\
&=& (a^2 +1)(n -a^2) \\
y_n &=& a(a^2 +1) -na \\
&=& a(a^2 +1 -n)
\end{eqnarray}となります。
のとき
\begin{equation}
n > a^2
\end{equation}です。
のとき
\begin{equation}
n < a^2 +1
\end{equation}です。
したがってかつのとき、
\begin{equation}
a^2 < n < a^2 +1 \tag{5}
\end{equation}となります。
が整数なので、不等式(5)を満たす整数は存在しません。
よって、の領域に直線の格子点は存在しないことが示されました。(証明終わり)
小問(3)の解答例
\begin{equation}
k > a(a^2 +1)
\end{equation}なので、整数はなる有理数を用いて
\begin{equation}
k = qa(a^2 +1)
\end{equation}と表すことができます。
以下、小問(2)と同様に、格子点の座標を求めます。
のとき
\begin{equation}
n > qa^2
\end{equation}です。
のとき
\begin{equation}
n < q(a^2 +1)
\end{equation}です。
したがってかつのとき、
\begin{equation}
a^2 < \frac{n}{q} < a^2 +1 \tag{6}
\end{equation}となります。
なので、不等式(6)を満たす整数は存在します。
よって、の領域に直線の格子点は存在することが示されました。(証明終わり)
解説
ユークリッドの互除法を背景にしていると思われます。最大公約数を求める手法です。
2整数が互いに素である場合、適当な係数をそれぞれに掛けて1を作ることができます。
本設問では整数に文字を用いているので、恒等式を捏ねくりまわしている印象が出てしまっています。
別の筋で考えていたのですが、
\begin{equation}
2x +5y = 11 \quad (a = 2, \ k = 11)
\end{equation}が(3, 1)を通ることに気付いたため、こちらの答案に改めています。