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2000年後期 京大 理系 第3問

 xy平面上の点で x座標、 y座標がともに整数である点を格子点という。 a,kは整数で a \geqq 2とし、直線 L: \ ax +(a^2 +1)y = kを考える。

(1) 直線 L上の格子点を1つ求めよ。

(2)  k = a(a^2 +1)のとき、 x > 0, \ y > 0の領域に直線 L上の格子点は存在しないことを示せ。

(3)  k > a(a^2 +1)ならば、 x > 0, \ y > 0の領域に直線 L上の格子点が存在することを示せ。

小問(1)の解答例

直線 L
\begin{equation}
ax +(a^2 +1)y = k \tag{1}
\end{equation}が通過する点について、次のように考えていきます。

恒等式
\begin{equation}
a(-a) +(a^2 +1) \cdot 1 = 1
\end{equation}の両辺を k倍すると、
\begin{equation}
a(-ka) +(a^2 +1)k = k \tag{2}
\end{equation}を得ます。

式(2)は、整数の組
\begin{equation}
(x,y) = (-ka, k)
\end{equation}が式(1)を満たすことを示しています。
よって、直線 Lの格子点の1つ (x_0, y_0)は、
\begin{equation}
(x_0, y_0) = (-ka, k)
\end{equation}です。

小問(2)の解答例

恒等式
\begin{equation}
a(a^2 +1) -a(a^2 +1) = 0
\end{equation}の両辺に整数 nを掛けます。
\begin{equation}
na(a^2 +1) -na(a^2 +1) = 0 \tag{3}
\end{equation}となります。
式(2), (3)を辺々相加えると
\begin{equation}
a \left \{ -k +n(a^2 +1) \right \} +(a^2 +1)(k -na) = k \tag{4}
\end{equation}を得ます。

式(4)は、整数の組
\begin{equation}
(x,y) = \left( -ka +n(a^2 +1), \ k -na \right)
\end{equation}が式(1)を満たすことを示しています。
よって、
\begin{equation}
(x_n, y_n) = \left( -ka +n(a^2 +1), \ k -na \right)
\end{equation}も格子点です。
 a, a^2 +1は互いに素なので、ある格子点の隣の格子点は
\begin{equation}
(x_{n \pm 1}, y_{n \pm 1}) = \left( x_n \pm (a^2 +1), \ y_n \mp a \right)
\end{equation}です。複号は同順です。

さて、
\begin{equation}
k = a(a^2 +1)
\end{equation}のとき、格子点の座標は
\begin{eqnarray}
x_n &=& -a^2(a^2 +1) +n(a^2 +1) \\
&=& (a^2 +1)(n -a^2) \\
y_n &=& a(a^2 +1) -na \\
&=& a(a^2 +1 -n)
\end{eqnarray}となります。

 x_n > 0のとき
\begin{equation}
n > a^2
\end{equation}です。
 y_n > 0のとき
\begin{equation}
n < a^2 +1
\end{equation}です。
したがって x_n > 0かつ y_n > 0のとき、
\begin{equation}
a^2 < n < a^2 +1 \tag{5}
\end{equation}となります。

 aが整数なので、不等式(5)を満たす整数 nは存在しません。
よって、 x > 0, \ y > 0の領域に直線 Lの格子点は存在しないことが示されました。(証明終わり)

小問(3)の解答例

\begin{equation}
k > a(a^2 +1)
\end{equation}なので、整数 k q > 0なる有理数 qを用いて
\begin{equation}
k = qa(a^2 +1)
\end{equation}と表すことができます。

以下、小問(2)と同様に、格子点 (x_n, y_n)の座標を求めます。
 x_n > 0のとき
\begin{equation}
n > qa^2
\end{equation}です。
 y_n > 0のとき
\begin{equation}
n < q(a^2 +1)
\end{equation}です。
したがって x_n > 0かつ y_n > 0のとき、
\begin{equation}
a^2 < \frac{n}{q} < a^2 +1 \tag{6}
\end{equation}となります。

 q > 1なので、不等式(6)を満たす整数 nは存在します。
よって、 x > 0, \ y > 0の領域に直線 Lの格子点は存在することが示されました。(証明終わり)

解説

ユークリッドの互除法を背景にしていると思われます。最大公約数を求める手法です。
2整数が互いに素である場合、適当な係数をそれぞれに掛けて1を作ることができます。
本設問では整数に文字 aを用いているので、恒等式を捏ねくりまわしている印象が出てしまっています。
別の筋で考えていたのですが、
\begin{equation}
2x +5y = 11 \quad (a = 2, \ k = 11)
\end{equation}が(3, 1)を通ることに気付いたため、こちらの答案に改めています。