数式で独楽する

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相異なる固有値と付随する固有ベクトル

行列$A$で記述される一次変換について、
\begin{equation}
A \boldsymbol{v} = \lambda \boldsymbol{v}
\end{equation}となるような定数$\lambda$とベクトル \boldsymbol{v}が存在するとき、

といいます。
固有値・固有ベクトル - 数式で独楽する
固有ベクトルと一次変換 - 数式で独楽する

本稿では、

相異なる固有値に対する固有ベクトルは一次独立である

ことをみていきます。

一次変換を記述する行列とその固有値固有ベクトルを、
\begin{eqnarray}
A \boldsymbol{u} &=& \lambda \boldsymbol{u} \tag{1} \\
A \boldsymbol{v} &=& \mu \boldsymbol{v} \tag{2} \\
\lambda & \ne & \mu
\end{eqnarray}とします。なお、 \boldsymbol{u} \ne \boldsymbol{0}, \ \boldsymbol{v} \ne \boldsymbol{0}です。
本稿の主張は、
\begin{equation}
\boldsymbol{u} \nparallel \boldsymbol{v}
\end{equation}です。
そのことを証明していきます。

まず、 \boldsymbol{v} \parallel \boldsymbol{u}を仮定し、
\begin{equation}
\boldsymbol{v} = k \boldsymbol{u}, \quad k \ne 0 \tag{3}
\end{equation}とします。

式(1)~(3)より、
\begin{equation}
A \boldsymbol{v} = A(k \boldsymbol{u}) = kA \boldsymbol{u} = k\lambda \boldsymbol{u} = \lambda \boldsymbol{v}
\end{equation}を得ます。
これは、 \boldsymbol{v}固有値 \lambda \ (\ne \mu)であることを意味し、前提に矛盾します。

また、
\begin{equation}
A \boldsymbol{v} = \mu \boldsymbol{v} = k \mu \boldsymbol{u}
\end{equation}なので
\begin{equation}
k \mu = k \lambda \ \Longleftrightarrow \ k (\lambda - \mu) = 0
\end{equation}となります。前提で \lambda \ne \muなので
\begin{equation}
k=0
\end{equation}つまり
\begin{equation}
\boldsymbol{v} = \boldsymbol{0}
\end{equation}を得ます。これも前提に矛盾します。

よって、固有値が相異なる場合、対応する固有ベクトルは平行ではない、つまり一次独立であることが示されました。

なお、固有ベクトルが一次独立ならば対応する固有値は相異なることを意味しません。