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2003年前期 京大 理系 第5問

 a,b,c,dを実数とする。2次の正方行列 \displaystyle A = \left( \begin{array}{cc} a & b \\ c & d \end{array} \right)と2次の単位行列 Eに対して、集合 L(A) L(A) = \{ rE +sA | r,s \mbox{は実数} \}とする。このとき次の条件(*)が成立するための、 a,b,c,dについての必要十分条件を求めよ。

(*)  L(A)の要素Bは零行列でなければ逆行列をもつ

解答例

 tを実数とします。
 A = tEの場合、
\begin{equation}
B = (r +st) \, E
\end{equation}です。
 r +st \ne 0なら B逆行列を持ち、
\begin{equation}
B^{-1} = \frac{1}{r +st} \, E
\end{equation}です。
したがって、 a,b,c,dについての条件は、
\begin{equation}
a = d \ \mbox{かつ} \ b = c = 0
\end{equation}です。

 A \ne tEの場合、 r = s = 0でなければ Bは零行列になりません。
逆行列を持つ条件は、
\begin{eqnarray}
\det (rE +sA) &=& (r +sa)(r +sd) - sb \cdot sc \\
&=& r^2 +(a +d) sr +s^2 (ad -bc) \ne 0
\end{eqnarray}です。
 \det (rE +sA) = 0が実数解を持たない条件を求めることになります。つまり、
\begin{equation}
D = (a +d)^2 s^2 -4s^2 (ad -bc) < 0
\end{equation}です。
 s^2 \geqq 0なので、
\begin{eqnarray}
(a +d)^2 -4(ad -bc) &<& 0 \\
\therefore \quad (a -d)^2 +4bc &<& 0
\end{eqnarray}を得ます。

以上より、(*)が成立する条件は、
\begin{equation}
a = d \ \mbox{かつ} \ b = c = 0
\end{equation}または
\begin{equation}
(a -d)^2 +4bc < 0
\end{equation}となります。

解説

 L(A)の要素が零行列になるのは A単位行列の定数倍の場合のみです。なのでそこで場合分けします。
片方は単位行列の定数倍である条件、もう片方は逆行列を持つ条件です。