数式で独楽する

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開平機能のない電卓で平方根を求める

開平機能のない、つまり[  \sqrt{\quad } ]ボタンのない電卓でも、次の手順で平方根 \sqrt{a}を求めることができます。

本稿では、
[ ]で括ったものはボタンを押すことを、
括らないものは数字ボタンを押すことを意味します。

カシオの電卓の場合

[AC][MC] x_0[M+]
 a[÷][MR][=][M+][MR][÷]2[=][MC][M+]
 a[÷][MR][=][M+][MR][÷]2[=][MC][M+]
(繰り返し)
 a[÷][MR][=][M+][MR][÷]2[=]
(値が変わらなくなれば終了)

初期値 x_0

キヤノンの電卓の場合

[CA] x_0[M+]
 a[÷][RM/CM][=][M+=][RM/CM][RM/CM][÷]2[=][M+=]
 a[÷][RM/CM][=][M+=][RM/CM][RM/CM][÷]2[=][M+=]
(繰り返し)
 a[÷][RM/CM][=][M+=][RM/CM][RM/CM][÷]2[=]
(値が変わらなくなれば終了)

検証はLS-101Tで行いました。
[RM/CM]ボタンは、
1回押すとメモリを呼び出し、
2回連続で押すとメモリを消去します。

解説

ニュートン法を用いています。考え方は次の通りです。
ニュートン法 - 数式で独楽する

方程式 x^2=aの解を求めるに当たり、次のような手順を踏んでいきます。
f:id:toy1972:20200130071402g:plain:w300

手順1

座標平面( xy平面上)に y=x^2-aのグラフを描きます。

手順2

 x = \sqrt{a}の近傍に点P (x_0, \, {x_0}^2-a)を定めます。
電卓操作手順1行目の[AC][MC] x_0[M+]の部分です。

手順3

点Pで y=f(x)の接線を引きます。
接線の方程式は、
\begin{equation}
y - {x_0}^2 +a =2x_0(x - x_0) \tag{1}
\end{equation}です。

手順4

接線と x軸の交点 (x_1, 0)を求めます。式(1)で y=0とします。
\begin{equation}
-{x_0}^2 + a = 2x_0(x_1 - x_0)
\end{equation}これより
\begin{eqnarray}
x_1 &=& x_0 - \frac{{x_0}^2-a}{2x_0} \\
&=& \frac{1}{2} \left( x_0 + \frac{a}{x_0} \right) \tag{2}
\end{eqnarray}
となります。

ボタンとの対応は次の通りです。

電卓操作手順の2行目
 a[÷][MR][=]で
\begin{equation}
\frac{a}{x_0}
\end{equation}を計算しています。

メモリに x_0が入っているので、次の[M+]で
\begin{equation}
x_0 + \frac{a}{x_0}
\end{equation}を計算し、[MR]で値を表示します。

[÷]2[=]とすれば
\begin{equation}
\frac{1}{2} \left( x_0 + \frac{a}{x_0} \right)
\end{equation}を求めることができます。

[MC]で一旦メモリを消去し、
[M+]で x_1を記憶させます。

手順5

新しい点Pを (x_1, f(x_1))と定め、手順3, 4を繰り返します。
点Pは、解 x=\sqrt{a}にだんだんと近付いていきます。
所期の精度が得られれば、計算を打ち切ります。
電卓操作手順の3行目以降に対応します。

以上のように、開平機能のない電卓で、平方根を求めることが可能です。