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2024年 東北大 理系 第6問 その2

 xyz空間内の xy平面上にある円 C: \ x^2 +y^2 = 1および円板 D : \ x^2 +y^2 \leqq 1を考える。 Dを底面とし点P(0, 0, 1)を頂点とする円錐を Kとする。A(0, -1, 0), B(0, 1, 0)とする。 xyz空間内の平面 H : \ z = xを考える。すなわち、 H xz平面上の直線 z = xと線分ABをともに含む平面である。 Kの側面と Hの交わりとしてできる曲線を Eとする。 \displaystyle -\frac{\pi}{2} \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{2}を満たす実数 \thetaに対し、円 C上の点Q (\cos \theta, \ \sin \theta, \ 0)をとり、線分PQと Eの交点をRとする。

(1) 線分PRの長さを r(\theta)とおく。 r(\theta) \thetaを用いて表せ。

(2) 円錐 Kの側面のうち、曲線 Eの点Aから点Rまでを含む部分、線分PA、および線分PRにより囲まれた部分の面積を S(\theta)とおく。 \thetaと実数 hが条件 0 \leqq \theta < \theta +h \leqq \displaystyle \frac{\pi}{2}を満たすとき、次の不等式が成り立つことを示せ。
\begin{equation}
\frac{h \{ r(\theta) \}^2}{2\sqrt{2}} \leqq S(\theta +h) -S(\theta) \leqq \frac{h \{ r(\theta +h) \}^2}{2\sqrt{2}}
\end{equation}

(3) 円錐 Kの側面のうち、円 C x \geqq 0の部分と曲線 Eにより囲まれた部分の面積を Tとおく。 Tを求めよ。必要であれば \displaystyle \tan \frac{\theta}{2} = uとおく置換積分を用いてもよい。

小問(1)の解答例

小問(3)の解答例

小問(2)の不等式の各辺を hで割り、 h \to 0とすると、
\begin{eqnarray}
S'(\theta) &=& \frac{\{ r(\theta) \}^2}{2\sqrt{2}} \\
&=& \frac{1}{\sqrt{2} (1 +\cos \theta)^2}
\end{eqnarray}を得ます。
関数の極限 はさみうちの原理 - 数式で独楽する
微分について - 数式で独楽する

したがって、円錐 Kの側面のうち、線分PA, PBおよび曲線 Eに囲まれた部分の面積は、
\begin{eqnarray}
S \left( \frac{\pi}{2} \right) &=& 2\int_0^{\pi/2} S'(\theta) \, d\theta \\
&=& \sqrt{2} \int_0^{\pi/2} \frac{d\theta}{(1 +\cos \theta)^2}
\end{eqnarray}となります。
求める面積 Tは、円錐 Kの側面の面積の半分よりこの部分の面積を除いたものとなります。

さて、
\begin{equation}
\tan \frac{\theta}{2} = u
\end{equation}とおくと、
\begin{equation}
\tan^2 \frac{\theta}{2} = \frac{1 -\cos \theta}{1 +\cos \theta} = u^2
\end{equation}より
\begin{eqnarray}
\cos \theta &=& \frac{1 -u^2}{1 +u^2} \\
1 +\cos \theta &=& \frac{2}{1 +u^2} \\
\frac{1}{(1 +\cos \theta)^2} &=& \frac{(1 +u^2)^2}{4} \\
\end{eqnarray}を得ます。
また、
\begin{equation}
\frac{1}{2} \left( 1 +\tan^2 \frac{\theta}{2} \right) d\theta = du
\end{equation}より
\begin{equation}
d\theta = \frac{2du}{1 +u^2}
\end{equation}を得ます。
さらに、積分区間の対応は次の通りです。
\begin{array}{|c|ccc|}
\hline
\theta & 0 & \to & \pi/2 \\ \hline
u & 0 & \to & 1 \\ \hline
\end{array}
定積分の置換積分 - 数式で独楽する
半角の公式 - 数式で独楽する

したがって、
\begin{eqnarray}
S\left( \frac{\pi}{2} \right) &=& \sqrt{2} \int_0^1 \frac{1}{2} (1 +u^2) \, du \\
&=& \frac{1}{\sqrt{2}} \left[ u +\frac{1}{3} \, u^3 \right]_0^1 \\
&=& \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \frac{4}{3} \\
&=& \frac{2\sqrt{2}}{3}
\end{eqnarray}となります。

一方、円錐 Kの側面の x \geqq 0の部分を展開したものは、半径 \sqrt{2}、弧長 \pi、中心角 \displaystyle \frac{\pi}{\sqrt{2}}の扇形なので、その面積は
\begin{equation}
\frac{1}{2} \left( \sqrt{2} \right)^2 \frac{\pi}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2} \, \pi
\end{equation}となります。

よって、求める面積 Tは、
\begin{eqnarray}
T &=& \frac{\sqrt{2}}{2} \, \pi -S \left( \frac{\pi}{2} \right) \\
&=& \frac{\sqrt{2}}{2} \, \pi -\frac{2\sqrt{2}}{3} \\
&=& \left( \frac{\pi}{2} -\frac{2}{3} \right) \sqrt{2}
\end{eqnarray}です。

解説

取っつきにくい空間図形の問題です。
小問(3)は単なる積分問題ですが、大人しく誘導に乗っておきます。誘導なしでこの積分を行うのはかなり難度が高いです。この置換にたどり着くには相当功夫を積んでいないと厳しいでしょう。