数式で独楽する

数式を使って楽しむブログです

[tex: ]

京大 2009年 理系 第3問

 n枚のカードを積んだ山があり、各カードには上から順番に1から nまで番号がつけられている。ただし n  \geqq 2とする。このカードの山に対して次の試行を繰り返す。1回の試行では、一番上のカードを取り、山の一番上に戻すか、あるいはいずれかのカードの下に入れるという操作を行う。これら n通りの操作はすべて同じ確率であるとする。 n回の試行を終えたとき、最初一番下にあったカード(番号 n)が山の一番上にきている確率を求めよ。

解答例

試行開始前に上から k番目にある番号 nの札が、試行後に1枚分上に上がる確率は、
\begin{equation}
\frac{n +k -1}{n}
\end{equation}です。

 n回の試行後に n番の札が一番上にある状況は以下の通りです。

 n -1回の試行後に n番の札が

  • (a) 一番上にあり、一番上を取り一番上に戻す。
  • (b) 上から2番目にあり、一番上を取り2番目以降に戻す。

(a)の確率について
(ア)  n -1回の試行後に n番札が一番上にある確率は、
\begin{equation}
\frac{1}{n} \cdot \frac{2}{n} \cdot \cdots \cdot \frac{n -1}{n}
\end{equation}です。
(イ)  n回目の試行で一番上を取り一番上に戻す確率は \displaystyle \frac{1}{n}です。
よって、当該の確率は、
\begin{equation}
\frac{1}{n} \cdot \frac{2}{n} \cdot \cdots \cdot \frac{n -1}{n} \cdot \frac{1}{n} = \frac{(n -1)!}{n^n}
\end{equation}です。

(b)の確率について
(ア)  n -1回の試行後に n番札が上から2番目にあるのは、 n番札が、

  • 上がる試行を n -2
  • 上がらない試行を n番札が 2,3,\cdots, n番目のいずれかにある時に1回

行った場合です。
確率は、
\begin{eqnarray}
\frac{1}{n} \cdot \frac{2}{n} \cdot \cdots \cdot \frac{n -2}{n} \sum_{k =2}^n \frac{k -1}{n}
&=& \frac{1}{n} \cdot \frac{2}{n} \cdot \cdots \cdot \frac{n -2}{n} \frac{(n -1)n}{2n} \\
&=& \frac{(n -1)! \, n}{2n^{n -1}}
\end{eqnarray}です。
(イ)  n回目の試行で n番札が上がる確率は
\begin{equation}
\frac{n -1}{n}
\end{equation}です。
したがって、(b)の確率は
\begin{equation}
\frac{(n -1)! \, n}{2n^{n -1}} \cdot \frac{n -1}{n} = \frac{(n -1)! \, (n -1)n}{2n^n}
\end{equation}となります。

よって、求める確率は
\begin{equation}
\frac{(n -1)!}{n^n} +\frac{(n -1)! \, (n -1)n}{2n^n} = \frac{(n -1)! \, (n^2 -n +2)}{2n^n}
\end{equation}です。

解説

1回の試行で n番札は1枚分上がるか、動かないかのいずれかです。
このことを踏まえて、 n番札が一番上にある状況を切り分けて、それぞれの確率を求めます。