数式で独楽する

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2000年前期 京大 文系 第4問

三角形ABCにおいて辺BC, CA, ABの長さをそれぞれ a,b,cとする。この三角形ABCは次の条件(イ)、(ロ)、(ハ)を満たすとする。

(イ) ともに2以上である自然数 p,qが存在して、 a = p +q, \ b = pq +p, \ c = pq +1となる。

(ロ) 自然数 nが存在して、 a,b,cのいずれかが 2^nである。

(ハ) ∠A, ∠B, ∠Cのいずれかは60°である。

このとき、次の問に答えよ。

(1) ∠A, ∠B, ∠Cを大きさの順に並べよ。

(2)  a,b,cを求めよ。

小問(1)の解答例

∠A, ∠B, ∠Cの大きさをそれぞれ A,B,Cとします。

与えられた条件から
\begin{eqnarray}
b -c &=& p -1 > 0 \\
c -a &=& pq -p -q +1 \\
&=& (p -1)(q -1) > 0
\end{eqnarray}なので、
\begin{equation}
b > c > a \tag{1}
\end{equation}を得ます。

外接円の半径を Rとすると、正弦定理により
正弦定理 - 数式で独楽する
\begin{equation}
\frac{a}{\sin A} = \frac{b}{\sin B} = \frac{c}{\sin C} = 2R \tag{2}
\end{equation}が成り立ちます。

式(1), (2)より、
\begin{equation}
\sin B > \sin C > \sin A
\end{equation}を得ます。これは、角の大きさが全て異なることを示しています。

最小の角が60°の場合、内角の和は180°を超え、不適です。
最大の角が60°の場合、内角の和は180°未満となり不適です。
したがって、60°の角は2番目に大きい角で、最大の角は120°を超えないこととなります。

ここで B = 60^\circを仮定すると、
\begin{equation}
\sin C < \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{equation}または
\begin{equation}
\sin A < \frac{\sqrt{3}}{2}
\end{equation}となります。いずれにしても最大の角が120°を超えるため、不適です。

 A = 60^\circを仮定すると、角Aが最小となるため、不適です。

したがって
\begin{equation}
C = 60^\circ
\end{equation}で
\begin{equation}
B > C > A
\end{equation}となります。
念のため、大きい順に

  • ∠B、∠C、∠A

です。

小問(2)の解答例

第2余弦定理より、
第2余弦定理 - 数式で独楽する
\begin{equation}
c^2 = a^2 +b^2 -2ab \cos C
\end{equation}が成り立ちます。
与えられた条件と小問(1)の結果を代入し、整理します。
\begin{eqnarray}
(pq +1)^2 &=& (p +q)^2 +(pq +p)^2 -(p +q)(pq +p) \\
p^2 q^2 +2pq +1 &=& p^2 +2pq +q^2 +p^2 q^2 +2p^2 q +p^2 -p^2 q -p^2 -pq^2 -pq
\end{eqnarray}さらに
\begin{eqnarray}
p^2 +q^2 +p^2 q -pq^2 -pq -1 &=& 0 \\
(p +1)(p -1) -q^2 (p -1) +pq(p -1) &=& 0 \\
(p -1)(p +1 -q^2 +pq) &=& 0 \\
(p -1) \left \{ p(q +1) -(q +1)(q -1) \right \} &=& 0 \\
(p -1)(q +1)(p -q +1) &=& 0
\end{eqnarray}となります。
 p,qは2以上の自然数なので、
\begin{equation}
q = p +1
\end{equation}となります。

したがって、
\begin{eqnarray}
a &=& 2p +1 \\
b &=& p(p +2) \\
c &=& p^2 +p +1 = p(p +1) +1
\end{eqnarray}ですが、 2^nになり得るのは
\begin{equation}
p(p +2) = 2^n
\end{equation}のみです。*1
\begin{equation}
p = 2k
\end{equation}とすると( k自然数)、
\begin{equation}
k(k +1) = 2^{n -2}
\end{equation}となります。
右辺が2のべき乗なので、等式が成り立つのは
\begin{equation}
k = 1
\end{equation}のみです。このとき
\begin{equation}
n = 3
\end{equation}です。
これより、
\begin{eqnarray}
p &=& 2 \\
q &=& 3
\end{eqnarray}を得ます。

よって、
\begin{eqnarray}
a &=& 5 \\
b &=& 8 \\
c &=& 7
\end{eqnarray}となります。

解説

小問(1)。3辺の長さが全て異なることはすぐに分かります。このことをもって3つの角の大きさは全て異なるとしてもよいかもしれませんが、本稿では念のために正弦定理を用いています。
小問(2)。角の1つが60°なので第2余弦定理を用いて力押ししています。

*1: p(p +1)は連続2整数の積のため、偶数です。