数式で独楽する

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2002年後期 京大 理系 第5問 その2別解

数列 \{ a_n \} , \ \{ b_n\} a_1 = 3, \ b_1 = 2
\begin{equation}
a_{n +1} = {a_n}^2 +2{b_n}^2, \ \ b_{n +1} = 2a_n b_n \quad (n \geqq 1)
\end{equation}で定める。

(1)  {a_n}^2 -2{b_n}^2を求めよ。

(2)  \displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n}を求めよ。

小問(2)の解答例

与えられた漸化式より、
\begin{eqnarray}
\frac{a_{n +1}}{b_{n +1}} &=& \frac{{a_n}^2 +2{b_n}^2}{2 a_n \, b_n} \\
&=& \frac{a_n}{2b_n} +\frac{b_n}{a_n}
\end{eqnarray}を得ます。
 c_n = \displaystyle \frac{a_n}{b_n}とすると、
\begin{equation}
c_{n +1} = \frac{c_n}{2} +\frac{1}{c_n}
\end{equation}となります。

数列 \{ c_n \}について、
\begin{eqnarray}
c_1 &=& \frac{3}{2} < \sqrt{2} \\
c_2 &=& \frac{17}{12} < \sqrt{2} \\
c_1 &>& c_2
\end{eqnarray}が成り立っています。

自然数 k \ (\geqq 1)に対して c_k > \sqrt{2}を仮定すると、漸化式と相加平均と相乗平均の関係により、
相加平均、相乗平均の関係 - 数式で独楽する
\begin{equation}
c_{k +1} > 2 \sqrt{\frac{c_k}{2} \cdot \frac{1}{c_k}} = \sqrt{2}
\end{equation}となります。
したがって、数学的帰納法により、
\begin{equation}
c_n > \sqrt{2}
\end{equation}が成り立ちます。
数学的帰納法 - 数式で独楽する

また、これより
\begin{eqnarray}
c_{n +1} -c_n &=& -\frac{c_n} +\frac{1}{c_n} \\
&=& \frac{-{c_n}^2 +2}{2c_n} < 0
\end{eqnarray}となります。

まとめると、
\begin{equation}
c_1 > c_2 > \cdots > c_n > \cdots > \sqrt{2}
\end{equation}であることが分かります。

さらに、漸化式より
\begin{eqnarray}
c_n -\sqrt{2} &=& \frac{c_{n -1}}{2} -\sqrt{2} +\frac{1}{c_{n -1}} \\
&=& \frac{1}{2} \left( c_{n -1} -\sqrt{2} \right) +\frac{1}{c_{n -1}} -\frac{1}{\sqrt{2}} \\
&<& \frac{1}{2} \left( c_{n -1} -\sqrt{2} \right) \\
& \vdots & \\
&<& \left( \frac{1}{2} \right)^{n -1} \left( c_1 -\sqrt{2} \right)
\end{eqnarray}となります。
つまり、
\begin{equation}
0 < c_n -\sqrt{2} < \left( \frac{1}{2} \right)^{n -1} \left( \frac{3}{2} -\sqrt{2} \right)
\end{equation}です。
 n \to \inftyとすると、右辺→0なので、
\begin{equation}
\lim_{n \to \infty} \left( c_n -\sqrt{2} \right) = 0
\end{equation}となります。
数列の極限 その2 はさみうちの原理 - 数式で独楽する

よって、
\begin{equation}
\lim_{n \to \infty} \frac{a_n}{b_n} = \sqrt{2}
\end{equation}です。

解説

極限値 \alphaが存在するとすれば
\begin{equation}
\alpha = \frac{\alpha}{2} +\frac{1}{\alpha}
\end{equation}として
\begin{equation}
\alpha = \sqrt{2}
\end{equation}が得られるます。ですが、極限値が存在することが分かっていないので、このやり方を是とできるかどうかは微妙なところです。
なお、漸化式の両辺から \sqrt{2}を引く発想は、このことによります。

実はこちらを先に考えついたのですが、後から簡単な方法があることに気付きました。