を実数とする。不等式
\begin{eqnarray}
ax^2 + bx + c &>& 0 \\
bx^2 + cx + a &>& 0 \\
cx^2 + ax + b &>& 0
\end{eqnarray}
をすべて満たす実数の集合と、を満たす実数の集合が一致しているとする。
(1) はすべて0以上であることを示せ。
(2) のうち少なくとも1個は0であることを示せ。
(3) であることを示せ。
前置き
3つの不等式を全て満たすというのが曲者です。簡単に表せそうにありません。
その一方、問題文に気になる表現があります。
「すべて~であることを示せ」
「少なくとも1個は~であることを示せ」
の箇所です。
「全ての~が命題を満たす」の否定は「命題を満たさない~がある」です。
問題文の記述は、「背理法(悖理法、帰謬法)を使ってくれ」と言っているかのようです。
(1)の答案
のうち、いずれか1つが負であると仮定します。
このとき、の係数が負となった不等式を満たすは、
のいずれかとなります。
いずれの場合も、を満たすの集合と一致することはあり得ません。
よって、
は全て0以上である
ことが示されました。
(2)の答案
の全てが0でないと仮定します。
このとき、不等式を満たすは、
のいずれかとなります。
いずれの場合も、を満たすの集合と一致することはあり得ません。
よって、
のうち、少なくとも1個は0である
ことが示されました。
(3)の答案
小問(1), (2)により、
\begin{equation}
a \geqq 0, \quad b \geqq 0, \quad c \geqq 0
\end{equation}かつ
\begin{equation}
c = 0
\end{equation}としても一般性を失いません。
このとき、3つの不等式は、
\begin{eqnarray}
ax^2 + bx &>& 0 \tag{3.1} \\
bx^2 + a &>& 0 \tag{3.2} \\
ax + b &>& 0 \tag{3.3}
\end{eqnarray}となります。
式(3.1)を変形すると
\begin{equation}
x(ax + b) > 0
\end{equation}です。
の場合、なので、式(3.1)を満たすは、
\begin{equation}
x < -\frac{b}{a}, \ 0 < x
\end{equation}となります。
の場合、であれば、式(3.1)を満たすは、
\begin{equation}
x > 0
\end{equation}となります。*5
式(3.2)について考えます。
かつの場合、全ての実数が式(3.2)を満たします。
かつの場合、式(3.2)を満たすは
\begin{equation}
x \ne 0
\end{equation}です。
の場合、であれば全ての実数が式(3.2)を満たします。*6
式(3.3)について考えます。
の場合、式(3.3)を満たすは
\begin{equation}
x > -\frac{b}{a}
\end{equation}となります。
の場合、であれば全ての実数が式(3.3)を満たします。*7
以上より、3つの不等式を全て満たす$x$は、
\begin{equation}
x > 0
\end{equation}となります。
これが
\begin{equation}
x > p
\end{equation}と一致するので、
\begin{equation}
p = 0
\end{equation}となります。