京大 1991年 前期 理系 第4問

実数に対し、次の不等式が成り立つことを示せ。
\begin{equation}
\sqrt{\tan a \cdot \tan b} \leqq \tan \left( \frac{a+b}{2} \right) \leqq \frac{1}{2} (\tan a + \tan b)
\end{equation}

解答例

関数$f(x)$を
\begin{equation}
f(x) = \tan x \quad \left( 0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{4} \right)
\end{equation}とすると、
\begin{eqnarray}
f'(x) &=& 1 + \tan^2 x \\
f''(x) &=& 2 \tan x (1 + \tan^2 x) \geqq 0 \quad (\because \tan x \geqq 0)
\end{eqnarray}なので、関数$f(x)$は定義域で下に凸です。
したがって、
\begin{equation}
f \left( \frac{a+b}{2} \right) \leqq \frac{f(a) + f(b)}{2}
\end{equation}です。
よって、
\begin{equation}
\tan \left( \frac{a+b}{2} \right) \leqq \frac{1}{2} (\tan a + \tan b) \tag{1}
\end{equation}が成り立ちます。
なお、等号成立は$a=b$のときです。

また、関数$g(x)$を
\begin{equation}
g(x) = \log (\tan x) \quad \left( 0 < x \leqq \frac{\pi}{4} \right)
\end{equation}とすると、
\begin{eqnarray}
g'(x) &=& \frac{1}{\tan x} (1 + \tan^2 x) \\
&=& \tan x + \frac{1}{\tan x} \\
g''(x) &=& 1 + \tan^2 x - \frac{1}{\tan^2 x} (1 + \tan^2 x) \\
&=& \tan^2 x - \frac{1}{\tan ^2 x} \leqq 0 \quad (\because 0 < \tan x \leqq 1)
\end{eqnarray}なので、関数$g(x)$は定義域で上に凸です。
したがって、
\begin{equation}
\frac{g(a) + g(b)}{2} \leqq g \left( \frac{a+b}{2} \right)
\end{equation}です。
これより、
\begin{equation}
\frac{\log (\tan a) + \log (\tan b)}{2} \leqq \log \left( \tan \left( \frac{a+b}{2} \right) \right)
\end{equation}となります。
この式の左辺は
\begin{equation}
\frac{\log (\tan a) + \log (\tan b)}{2} = \log \sqrt{\tan a \cdot \tan b}
\end{equation}と変形でき、
\begin{equation}
\log \sqrt{\tan a \cdot \tan b} \leqq \log \left( \tan \left( \frac{a+b}{2} \right) \right)
\end{equation}を得ます。
ここでは単調増加なので、
\begin{equation}
\sqrt{\tan a \cdot \tan b} \leqq \tan \left( \frac{a+b}{2} \right) \tag{2}
\end{equation}が成り立ちます。
直前まででしたが、この式では$a=0$や$b=0$でも成り立ちます。
なお、こちらも等号成立は$a=b$のときです。

以上、式(1), (2)より、実数に対し、
\begin{equation}
\sqrt{\tan a \cdot \tan b} \leqq \tan \left( \frac{a+b}{2} \right) \leqq \frac{1}{2} (\tan a + \tan b)
\end{equation}が成り立つことが証明されました。
なお、等号成立は$a=b$のときです。

解説

$f(x), g(x)$を図示すると次の通りです。

証明を求められている不等式ですが、両端の関係は相加平均と相乗平均の関係であり、証明は容易です。
ところが中央にがあるために、格段に難しくなっています。
普通に大小関係を確かめようとすると行き詰まります。
相加平均、相乗平均、調和平均 - 数式で独楽する
相加平均、相乗平均、調和平均の関係 - 数式で独楽する

解答例では関数の凹凸を用いて不等式を導きましたが、相加平均と相乗平均の関係に気を取られていると、関数の凹凸に気が付かないかもしれません。
下に凸、上に凸 - 数式で独楽する

また、左側の関係は対数も駆使していますが、これもなかなか気が付かないところです。
実際に解いてみた感じでは、

1. 右側の関係はが下に凸であることから求めた
2. 試しにでやってみると上手いこと行った
   1. 上に凸だった
   2. 対数の相加平均が、相乗平均の対数になった

というところです。