数式で独楽する

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京大 1991年 前期 理系 第5問 その2

袋の中に$N$個の白玉と3個の赤玉がある。「袋の中の$(N+3)$個の玉から無作為に1個を取り出し、次に外部にある白玉を1個袋に入れる」という試行をくり返す。$n$回目の試行で赤玉を取り出す確率を P_nとする。また、$n$回目の試行を行う前、袋の中に赤玉が$i$個$(i=1,2,3)$あり、かつ$n$回目の試行で赤玉を取り出す確率を P_{i,n} \ (i=1,2,3)とする。従って P_n = P_{1,n} + P_{2,n} + P_{3,n}である。

(1)  P_{1,n+1}, P_{2,n+1}, P_{3,n+1} P_{1,n}, P_{2,n}, P_{3,n}で表す式(漸化式)を求めよ。
(2)  P_{n+1} P_nで表す式を求め、 P_nを求めよ。

前回の続きです。
京大 1991年 前期 理系 第5問 その1 - 数式で独楽する

小問(1)の解答例

(i) i=3の場合(抄)

\begin{equation}
P_{3,n+1} = \frac{N}{N+3} \, P_{3,n} \tag{1.1}
\end{equation}です。

(ii) i=2の場合(抄)

\begin{equation}
P_{2,n+1} = \frac{2}{N+3} \, P_{3,n} + \frac{N+1}{N+3} \, P_{2,n} \tag{1.2}
\end{equation}です。

(iii) i=1の場合

$n, \ n+1$回目の開始時点で赤玉が1個残っている確率を考えます。
それまでの試行で2個目の赤玉を取り出しているということです。
それがいつなのかを考慮する必要があります。
$k$回目で2個目赤玉を取り出し、かつ$n, \ n+1$回目で赤玉を1個残っている確率は次のようになります。*1 *2
\begin{array}{|c|c|c|}
\hline
k & n & n+1 \\ \hline \hline
2 & P_{2,2} \left( \frac{N+2}{N+3} \right)^{n -3} & P_{2,2} \left( \frac{N+2}{N+3} \right)^{n -2} \\
3 & P_{2,3} \left (\frac{N+2}{N+3} \right)^{n -4} & P_{2,3} \left( \frac{N+2}{N+3} \right)^{n -3} \\
\vdots & \vdots & \vdots \\
n -2 & P_{2,n -2} \, \frac{N+2}{N+3} & P_{2,n -2} \left( \frac{N+2}{N+3} \right)^2 \\
n -1 & P_{2,n -1} & P_{2,n -1} \, \frac{N+2}{N+3} \\
n & - & P_{2,n} \\ \hline
\mbox{合計} & Q_{1,n} & Q_{1,n+1} \\ \hline
\end{array}
ここで、
\begin{eqnarray}
P_{1,n} &=& \frac{1}{N+3} \, Q_{1,n} \\
P_{1,n+1} &=& \frac{1}{N+3} \, Q_{1,n+1}
\end{eqnarray}なので、
\begin{equation}
P_{1,n+1} = \frac{1}{N+3} \, P_{2,n} + \frac{N+2}{N+3} \, P_{1,n} \tag{1.3}
\end{equation}を得ます。

まとめ

以上をまとめると、次のようになります。
\begin{eqnarray}
P_{3,n+1} &=& \frac{N}{N+3} \, P_{3,n} \tag{1.1} \\
P_{2,n+1} &=& \frac{2}{N+3} \, P_{3,n} + \frac{N+1}{N+3} \, P_{2,n} \tag{1.2} \\
P_{1,n+1} &=& \frac{1}{N+3} \, P_{2,n} + \frac{N+2}{N+3} \, P_{1,n} \tag{1.3}
\end{eqnarray}

小問(2)の解答例

式(1.1)~(1.3)により、
\begin{equation}
P_{3,n+1} + P_{2,n+1} + P_{1,n+1} = \frac{N+2}{N+3} (P_{3,n} + P_{2,n} + P_{1,n})
\end{equation}つまり、
\begin{equation}
P_{n+1} = \frac{N+2}{N+3} \, P_n
\end{equation}を得ます。
これより、
\begin{equation}
P_n = \left( \frac{N+2}{N+3} \right)^{n -1} \, P_1
\end{equation}ですが、
\begin{equation}
P_1 = \frac{3}{N+3}
\end{equation}なので、
\begin{equation}
P_n = \frac{3}{N+3} \left( \frac{N+2}{N+3} \right)^{n -1}
\end{equation}を得ます。

解説

設問にある「袋の中の$(N+3)$個の玉から無作為に1個を取り出し、次に外部にある白玉を1個袋に入れる」という試行が、思いのほか複雑だったということでしょうか。
ゆえに設問の誘導があるわけです。
1回の試行で赤玉を引く確率は簡単極まりないですが、$n$回目の試行を始める前に赤玉がいくつ残っているのかを整理する必要があります。
設問の$P_{i,n}$は、$n$回目に「それまでの試行がどうであれ、とにかく$i$個の赤玉が残っている」状態で赤玉を引く確率であるからです。
引いた赤玉は元に戻らないので、赤玉3個の場合は簡単に考えることができます。
赤玉2個の場合は、それまでの試行で赤玉を1回引いているので、その1回がいつなのかを踏まえて、全ての場合を足し合わせる必要があります。
赤玉1個の場合も、$P_{2,k}$は「それまでの試行にかかわらず、とにかく赤玉を1回引いている」状態を包絡しているので、赤玉2個の場合と同様です。

*1:$k+1$回目以降は、赤玉が1個、白玉が$N+2$個になっています。

*2:1回目の試行で赤玉が1個になることはあり得ません。