数式で独楽する

数式を使って楽しむブログです

[tex: ]

名大1997年 理系 第4問 選択(b)

(1) 多項式 f(x) = x^3 +ax^2 +bx +c \ (a,b,cは実数)を考える。 f(-1), \ f(0), \ f(1)がすべて整数ならば、すべての整数$n$に対し、 f(n)が整数であることを示せ。

(2)  f(1996), \, f(1997), \, f(1998)がすべて整数の場合はどうか?

小問(1)の解答例

条件より、
\begin{eqnarray}
f(0) &=& c \in \mathbb{Z} \tag{1} \\
f(1) &=& 1 +a +b +c \in \mathbb{Z} \\
f(-1) &=& -1 +a -b +c \in \mathbb{Z}
\end{eqnarray}です。 \mathbb{Z}は整数の集合です。
これより、
\begin{eqnarray}
a +b & \in & \mathbb{Z} \\
a -b & \in & \mathbb{Z} \tag{2}
\end{eqnarray}です。
さらに、
\begin{equation}
2b \in \mathbb{Z} \tag{3}
\end{equation}も成り立ちます。

一方、$f(n)$は
\begin{eqnarray}
f(n) &=& n^3 +an^2 + bn +c \\
&=& n^3 +(a -b)n^2 +b(n^2 +n) +c \\
&=& n^3 +(a -b)^2 +2b \cdot \frac{1}{2} \, n(n+1) +c \tag{4}
\end{eqnarray}と変形できます。

また、 n \in \mathbb{Z}であれば
\begin{equation}
\frac{1}{2} \, n(n+1) \in \mathbb{Z}
\end{equation}です。*1

したがって、式(1)~(3)により、式(4)は
\begin{equation}
f(n) \in \mathbb{Z}
\end{equation}つまり f(n)は整数であることが示されました。(証明終わり)

小問(2)の解答例

小問(1)の命題は、

$x^3$の係数が1である実数係数の3次式 f(x)について、 f(-1), \ f(0), \ f(1)が整数ならば、任意の整数$n$に対し f(n)は整数である。

ということです。

いま、
\begin{equation}
g(x) = f(x+1997)
\end{equation}を定めると、

  •  g(x)は$x^3$の係数が1である実数係数の3次式
  •  g(-1)=f(1996), \ g(0)=f(1997), \ g(1)=f(1998)は全て整数

です。
したがって、任意の整数$n$に対して g(n)は整数であることが分かります。

つまり、 f(1996), \, f(1997), \, f(1998)がすべて整数の場合でも、全ての整数$n$に対して f(n)が整数となります。

解説

小問(1)

素直に数字を代入すると、$a,b,c$の特定の組合せが整数になることが分かります。
この関係を用いて任意の$n$に対して f(n)が整数かどうかを吟味することになります。式変形に工夫が必要です。

小問(2)

小問(1)で示した命題を咀嚼すれば、変数をずらすだけで g(-1), \ g(0), \ g(1)が全て整数という状況を作ることができます。
すると小問(1)の結果を当てはめることができます。
わざわざ (x +1997)^3を計算する必要はありません。

*1:連続する2整数の積は偶数、つまり2の倍数です。2で割っても整数であることを担保できます。