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京大 2009年 理系 第6問 その2

 a,bを互いに素、すなわち1以外の公約数をもたない正の整数とし、さらに aは奇数とする。
正の整数 nに対して整数 a_n, b_n
\begin{equation}
\left( a +b \sqrt{2} \right)^n = a_n +b_n \sqrt{2}
\end{equation}を満たすように定めるとき、次の(1), (2)を示せ。ただし \sqrt{2}無理数であることは証明なしに用いてよい。

(1)  a_2は奇数であり、 a_2 b_2は互いに素である。

(2) すべての nに対して、 a_nは奇数であり、 a_n b_nは互いに素である。

小問(2)の解答例

 n=1の場合、小問(1)で

  •  a_1は奇数
  •  a_1, b_1は互いに素

であることを示しています。

 n =kの場合、

  •  a_kは奇数
  •  a_k, b_kは互いに素

であると仮定します。

\begin{eqnarray}
\left( a +b \sqrt{2} \right)^{k +1} &=& a_{k +1} +b_{k +1} \sqrt{2} \\
\left( a +b \sqrt{2} \right)^{k +1} &=& \left( a +b \sqrt{2} \right) \left( a_k +b_k \sqrt{2} \right) \\
&=& aa_k +2bb_k +(ba_k +ab_k) \sqrt{2}
\end{eqnarray}なので、
\begin{eqnarray}
a_{k +1} &=& aa_k +2bb_k \tag{3} \\
b_{k +1} &=& ba_k +ab_k \tag{4}
\end{eqnarray}を得ます。

式(3)より、 a, a_kは奇数なので、 a_{k +1}も奇数となります。

一方、 a_{k +1}, b_{k +1}が互いに素ではないと仮定します。
つまり、共通の素因数 pを持ち、
\begin{eqnarray}
a_{k +1} &=& p \alpha \\
b_{k +1} &=& p \beta
\end{eqnarray}と表すことができると仮定します。
式(3), (4)より、
\begin{eqnarray}
a_k &=& \frac{aa_{k +1} -2bb_{k +1}}{a^2 -2b^2} &=& \frac{p(a \alpha -2b \beta)}{a^2 -2b^2} \tag{5} \\
b_k &=& \frac{ba_{k +1} -ab_{k +1}}{2b^2 -a^2} &=& \frac{p(b \alpha -a \beta)}{2b^2 -a^2} \tag{6}
\end{eqnarray}を得ます。

式(5), (6)は、 a_k, b_kが共通の素因数 pを持つことを示しています。
つまり、「 a_k. b_kは互いに素」という仮定に反することになります。
したがって、「 a_{k +1}, b_{k +1}が互いに素ではない」という仮定が誤りとなります。
よって、「 a_{k +1}, b_{k +1}は互いに素」であることが示されます。

以上より、全ての正の整数 nに対し、

  •  a_nは奇数
  •  a_n,  b_nは互いに素

であることが証明されました。

解説

数学的帰納法を用いることとなります。
数学的帰納法 - 数式で独楽する
ですが、「互いに素」を示す筋道が分かりにくいです。
背理法を用いると、意外と証明が楽になります。
背理法 - 数式で独楽する