数式で独楽する

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2000年前期 京大 理系 第4問

 p素数 a,bを互いに素な正の整数とするとき、 (a +bi)^pは実数ではないことを示せ。ただし、 i虚数単位を表す。

解答例

(i)  p = 2の場合
\begin{equation}
(a +bi)^2 = a^2 -b^2 +2abi
\end{equation}となります。
 ab \ne 0なので、 (a +bi)^2は実数になり得ません。

(ii)  p \geqq 3の場合
二項定理により、
二項定理 - 数式で独楽する
\begin{eqnarray}
(a +bi)^p &=& \sum_{n = 0}^p {}_p C_n a^{p -n} (bi)^n \\
&=& (q^p a^p +q_{p -2} a^{p -2} b^2 +\cdots +q_3 a^3 b^{p -3} +q_1 ab^{p -1}) \\
&& +(q^{p -1} a^{p -1} b +q_{p -3} a^{p -3} b^3 +\cdots +q_2 a^2 b^{p -2} +q_0 b^p)\, i
\end{eqnarray}を満たす数列 \{ q_n \}を定めることができます。*1

これが実数であるならば、
\begin{equation}
q^{p -1} a^{p -1} b +q_{p -3} a^{p -3} b^3 +\cdots +q_2 a^2 b^{p -2} +q_0 b^p = 0
a\end{equation}が成り立ちます。
 q_0 = \pm 1なので、
\begin{eqnarray}
\pm b^p &=& q^{p -1} a^{p -1} b +q_{p -3} a^{p -3} b^3 +\cdots +q_2 a^2 b^{p -2} \\
\Rightarrow \quad b^{p -1} &=& a^2(q^{p -1} a^{p -3} +q_{p -3} a^{p -5} b^2 +\cdots +q_2 b^{p -3}) \tag{1}
\end{eqnarray}となります。
式(1)の右辺は a^2の倍数となっていますが、左辺はそうなっていません。 a \ne bだと式(1)は成り立ち得ません。
 a,bは互いに素な正の整数なので、
\begin{equation}
a = b = 1
\end{equation}となります。

このとき、
\begin{eqnarray}
(1 +i)^p &=& \sqrt{2} e^{p \pi i/4} \\
&=& \sqrt{2} \left( \cos \frac{\pi}{4} \, p +i \sin \frac{\pi}{4}\, p \right)
\end{eqnarray}ですが、
オイラーの公式の証明 - 数式で独楽する
 pは奇数なので、虚部は0になり得ません。

以上より、 (a +bi)^pは実数になりません。(証明終わり)

解説

展開して虚部が0となる条件を見ることになります。 a,bが互いに素であることが強力な手掛かりとなります。
「互いに素」とは2整数の最大公約数が1であることです。1と1も互いに素なのですが、直感的には違和感を感じてしまいます。

*1: q_n = \pm {}_p C_nです。 pは奇数なので、 (a +bi)^pを展開すると項数は偶数となり、実部と虚部は (p +1)/2項ずつとなります。