数式で独楽する

数式を使って楽しむブログです

[tex: ]

京大 2008年 理系 第3問

空間の1点Oを通る4直線で、どの3直線も同一平面上にないようなものを考える。このとき、4直線のいずれもO以外の点で交わる平面で、4つの交点が平行四辺形の頂点になるようなものが存在することを示せ。

f:id:toy1972:20210925215349p:plain:w300

解答例

平面と4直線の交点をA, B, C, D、
\begin{eqnarray}
\vec{a} &=& \overrightarrow{\mathrm{OA}} \\
\vec{b} &=& \overrightarrow{\mathrm{OB}} \\
\vec{c} &=& \overrightarrow{\mathrm{OC}} \\
\vec{d} &=& \overrightarrow{\mathrm{OD}}
\end{eqnarray}とします。いずれの2ベクトルも平行ではありません。
点Dについては、実数 s,t,uを用いて
\begin{equation}
\vec{d} = s \vec{a} +t \vec{b} +u \vec{c} \tag{1}
\end{equation}と表すことができます。このようにおいても一般性を失いません。
なお、点Dは3直線OA, OB, OCのうち任意の2直線でなす平面上に存在しないので、
\begin{equation}
stu = 0
\end{equation}です。

点Dは平面ABC上に存在するので、 s, t, u
\begin{equation}
s +t +u =1 \tag{2}
\end{equation}を満たします。

これより、4点A, B, C, Dが平行四辺形をなすための条件を求めていきます。その条件は、式(3)~(5)のうちのいずれかとなります。
\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{AD}} &=& \overrightarrow{\mathrm{AB}} +\overrightarrow{\mathrm{AC}} \tag{3} \\
\overrightarrow{\mathrm{BD}} &=& \overrightarrow{\mathrm{BA}} +\overrightarrow{\mathrm{BC}} \tag{4} \\
\overrightarrow{\mathrm{CD}} &=& \overrightarrow{\mathrm{CA}} +\overrightarrow{\mathrm{CB}} \tag{5}
\end{eqnarray}

式(3)より、
\begin{eqnarray}
\vec{d} -\vec{a} &=& (\vec{b} -\vec{a}) +(\vec{c} -\vec{a}) \\
\vec{d} &=& -\vec{a} +\vec{b} +\vec{c}
\end{eqnarray}を得ます。
同様に、式(4), (5)より、
\begin{eqnarray}
\vec{d} &=& \vec{a} -\vec{b} +\vec{c} \tag{7} \\
\vec{d} &=& \vec{a} +\vec{b} -\vec{c} \tag{8}
\end{eqnarray}を得ます。

式(1), (2), (6)~(8)により、 s, t, uの満たすべき条件は、式(9)~(11)のいずれかとなります。
\begin{eqnarray}
(s,t,u) &=& (-1,1,1) \tag{9} \\
(s,t,u) &=& (1,-1,1) \tag{10} \\
(s,t,u) &=& (1,1,-1) \tag{11}
\end{eqnarray}

逆に、

  • 式(9)とすれば式(3)
  • 式(10)とすれば式(4)
  • 式(11)とすれば式(5)

を満たす一次独立な3ベクトル \vec{a}, \vec{b}, \vec{c}、つまり平面ABCを定めることができ、この平面上で4点A, B, C, Dは平行四辺形をなします。

つまり、

  • ODは向きも長さも固定
  • OA OB, OCは向きのみ固定、長さは可変

とした場合、式(9)~(11)のいずれかを満たすようにOA OB, OCの長さを変える、つまり直線OA, OB, OC, ODを指定して平面ABCを動かすことで4点A, B, C, Dで平行四辺形を作ることができることが言えます。

以上より、題意を証明することができました。

解説

3点A, B, Cを固定して点Dを動かすように見える記述になっています。
「逆に」以降では点Dを固定して3点A B Cを動かす記述です。
4直線OA, OB, OC, ODは

  • 直線は固定して4点A, B, C, Dは任意に動かすことが可能
  • 直線そのものも動かすことが可能

です。