数式で独楽する

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東大 2020年 前期 理系 第3問(2/2)

 -1 \leqq t \leqq 1を満たす実数 tに対し、
\begin{eqnarray}
x(t) &=& (1 + t)\sqrt{1 + t} \\
y(t) &=& 3(1 + t)\sqrt{1 - t}
\end{eqnarray}とする。座標平面上の点P (x(t), \, y(t))を考える。

(1)  -1 < t \sqrt 1における tの関数 \displaystyle \frac{y(t)}{x(t)}は単調に減少することを示せ。
(2) 原点とPとの距離を f(t)とする。 -1 \leqq t \leqq 1における tの関数 f(t)の増減を調べ、最大値を求めよ。
(3)  t -1 \leqq t \leqq 1を動くときのPの軌跡を Cとし、 C x軸で囲まれた領域を Dとする。原点を中心として Dを時計回りに 90^\circ回転させるとき、 Dが通過する領域の面積を求めよ。

続きです。
東大 2020年 前期 理系 第3問(1/2) - 数式で独楽する

小問(3)の答案

図形を原点を中心に回転させ、通過する領域について考えます。
原点より最も遠い点と原点を結んだ線分 lが通過する領域が、他の部分が通過する領域を覆うことになります。
線分 lが通過しない領域は、

  • 領域 Dの線分 lより上の部分
  • 線分 Dの線分 lより下の部分を 90^\circ回転させたもの

です。面積としては、領域 Dの面積に相当します。

小問(1), (2)により、領域 Dを原点周りに 90^\circ時計回りに回転させたときに通過する領域の面積は、

  • 領域 Dの面積
  • 曲線 C上の最も原点より遠い点までの距離を半径とする四分円の面積

の和となります。
f:id:toy1972:20200409230759p:plain:w300
図では斜線部と打点部の和となります。

 -1 \leqq t \leqq 1において x(t)は単調増加で 0 < x < 2\sqrt{2}あることと、
\begin{equation}
dx = \frac{3}{2} \sqrt{1 + t} \, dt
\end{equation} であることから、 Dの面積は次のようになります。
\begin{eqnarray}
\int_0^{2\sqrt{2}} y \, dx &=& \int_{-1}^1 3(1 + t) \sqrt{1 - t} \cdot \frac{3}{2} \sqrt{1 + t} \, dt \\
&=& \frac{9}{2} \int_{-1}^1 (1 + t) \sqrt{1 - t^2} \, dt \\
&=& 9 \int_0^1 \sqrt{1 - t^2} \, dt \\
&=& \frac{9}{4} \, \pi
\end{eqnarray}となります。*1 *2
定積分の置換積分 - 数式で独楽する

四分円の面積は、
\begin{equation}
\frac{1}{4} \left \{ f \left( \frac{1}{2} \right) \right \}^2 = \frac{1}{4} \cdot \frac{9 \cdot 6}{4} \, \pi = \frac{27}{8} \, \pi
\end{equation}です。

よって、求める領域の面積は、
\begin{equation}
\left( \frac{9}{4} + \frac{27}{8} \right) \, \pi = \frac{45}{8} \, \pi
\end{equation}となります。

小問(3)の解説

この問題のポイントは、領域 Dが回転して通過する領域を、落ち着いて考えられるかどうかにあるのでしょう。
求める面積が領域 Dそのものと四分円であることを見破れば解くことができます。
領域 Dの面積を求めるのは、 x,y tの関数となっていることを踏まえて、置換積分で攻めていくことになります。

*1: \sqrt{1 - t^2}は偶関数なので \begin{equation} \int_{-1}^1 \sqrt{1 - t^2} \, dt = \int_0^1 \sqrt{1 - t^2} \, dt \end{equation}となります。 t\sqrt{1 - t^2}は奇関数なので、 \begin{equation} \int_{-1}^1 t\sqrt{1 - t^2} \, dt = 0 \end{equation}となります。

*2:\begin{equation} \int_0^1 \sqrt{1 - t^2} \, dt \end{equation}は、半径1の四分円の面積となります。