数式で独楽する

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複素数値関数のノルム

「ノルム」を突き詰めるといろいろ複雑ですが、ここでは

に限定して話を進めます。


複素数値関数 A(x)の「ノルム」は、
\begin{equation}
||A(x)||^2 = \langle \overline{A(x)}, A(x) \rangle = \int_a^b \overline{A(x)} A(x) \, dx
\end{equation}です。式中のオーバーラインは複素共軛(共役)を意味します。
共軛複素数 - 数式で独楽する

関数のノルムの2乗は、自身との内積で与えられます。
複素数値関数の内積 - 数式で独楽する

ここで関数のノルムとベクトルのノルムを比較していきます。
ベクトルの内積 - 数式で独楽する
関数のノルム - 数式で独楽する

 n次元の複素数値ベクトル \boldsymbol{A}
\begin{equation}
\boldsymbol{A} = A_1 \boldsymbol{x}_1 + A_2 \boldsymbol{x}_2 +\cdots + A_n \boldsymbol{x}_n
\end{equation}とします。ここで \boldsymbol{x}_1, \boldsymbol{x}_2, \cdots , \boldsymbol{x}_n n次元の単位ベクトルで、互いに直交します。

このとき、ベクトルのノルムの2乗は
\begin{eqnarray}
||\boldsymbol{A}||^2 &=& \overline{\boldsymbol{A}} \cdot \boldsymbol{A} \\
&=& \boldsymbol{A}^* \boldsymbol{A} \\
&=& \overline{A_1} A_1 + \overline{A_2} A_2 + \cdot +\overline{A_n} A_n \\
&=& ||A_1||^2 + ||A_2||^2 + \cdots + ||A_n||^2 \\
&=& \sum_{i=1}^n ||A_i||^2 \tag{1}
\end{eqnarray}です。式中の「*」は共軛転置(随伴)を意味します。
こちらも自身との内積で与えられます。
転置行列と随伴行列 - 数式で独楽する

このように、複素数値関数のノルムは、ベクトルのノルムと類似の考え方となっていることが分かります。