数式で独楽する

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2005年前期 京大 文系 第3問 別解

 \alpha, \betaは0でない相異なる複素数で、 \displaystyle \frac{\alpha}{\beta} +\frac{\bar{\alpha}}{\bar{\beta}} = 2を満たすとする。このとき、 \alpha, \beta, \gammaの表す複素平面上の3点を結んで得られる三角形はどのような三角形か。

解答例

複素数 \alpha, \betaを、実数 a > 0, \ b > 0, \ \theta, \ \phiを用いて
\begin{eqnarray}
\alpha &=& a \, e^{i \theta} \\
\beta &=& b \, e^{i \phi}
\end{eqnarray}とします。
共役(共軛)複素数
\begin{eqnarray}
\bar{\alpha} &=& a \, e^{-i \theta} \\
\bar{\beta} &=& b \, e^{-i \phi}
\end{eqnarray}です。

これより、
\begin{equation}
\frac{\alpha}{\beta} +\frac{\bar{\alpha}}{\bar{\beta}} = \frac{2a}{b} \, \cos (\theta -\phi) = 2
\end{equation}となります。
複素数の極形式 - 数式で独楽する

したがって、
\begin{equation}
\cos (\theta -\phi) = \frac{b}{a} \tag{1}
\end{equation}を得ます。
ここで、 |\theta -\phi| \alpha, \betaのなす角になります。
式(1)は、 0, \alpha, \betaが頂点 \betaを直角とする直角三角形であることを示しています。
三角比・三角関数 - 数式で独楽する

三角形 0\alpha \betaが直角三角形であることを式(1)は示しているわけですが、補足しておきます。
 |\alpha -\beta| = cとして第2余弦定理を用いると
第2余弦定理 - 数式で独楽する
\begin{equation}
c^2 = a^2 +b^2 -2ab \cos (\theta -\phi)
\end{equation}となります。
これに式(1)を当てはめると
\begin{equation}
c^2 = a^2 -b^2
\end{equation}つまり
\begin{equation}
a^2 = b^2 +c^2
\end{equation}を得ます。
三平方の定理の定理の逆
三平方の定理の逆 - 数式で独楽する
により、頂点 \betaがを直角であることが分かります。

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解説

本稿では、複素数極座標で表記すれば何とかなるかも、という発想によるものです。
条件で2数の割り算が与えられており、極座標で表すと2数のなす角が現れます。
式(1)を得るのは容易ですが、解釈が難しいです。
この形が余弦の意味するところそのものであることを理解するのに少し時間がかかりました。

本稿の後、こちらの解法
2005年前期 京大 文系 第3問 - 数式で独楽する
で解いています。

こういうやり方もあります。
2005年前期 京大 文系 第3問 別解2 - 数式で独楽する